2010年04月15日

鑑定書と鑑別書

宝石鑑定のお話し


宝石の鑑定には「鑑定書」「鑑別書」という2種類があり、
「鑑別書」はすべての宝石の鑑定を対象としています。

いっぽう、「鑑定書」は「グレーディングレポート」と呼ばれ、ダイヤモンドのみの鑑定を「4C」で分析して表すものです。

鑑定機関にも依りますが、「グレーディングレポート」は、4Cの分析結果と鑑定ダイヤのアップ写真、ルースの横から見た図を表示し、ルースのプロポーションを細かに記載しています。


カットグレードに関しては、「トリプルエクセレント」の場合、プロポーションレポートとして、もう一面「ハートアンドキューピット(H&C)」の写真と分析結果を示す記述がなされたレポートが記載されたりします。



トリプルエクセレント

「トリプルエクセレント」とは、カットの状態の @「総合評価」A「ポリッシュ(研磨状態)」B「シンメトリー(対称性)」の三つが「EXCELLENT」と評価されたものをいいます。

「エクセレント」及び「エクセレントH&C」は、ポリッシュかシンメトリーのどちらかが、「ベリーグッド(VeryGood)」の評価の場合です。

たまに「トリプルエクセレント」でも「H&C」が出ないものもあるようです。
市場価値としては、やはり「3Excellent H&C」 (トリプルエクセレント ハートアンドキューピット)が最高でしょう。


ハートアンドキューピットは、特別な証明条件で、下面(キューレット側・パヴィリオン側)から見ると、ハート型の模様が現れ、上面(テーブル側・クラウン側)から見ると、アロー(矢)型の模様が現れることから命名されています。


ちなみに、「テーブル」とは上面からみて、真ん中あたりの平になった部分をいい、「ファセット」とはそのテーブルの周りの脇の部分をいいます。

「キューレット(キュレット)」とは、下面の尖った部分のことです。
横から見て、幅が一番広く薄い部分の円盤?の部分のことは、
「ガードル」と呼びます。

横から見て、そのガードルより上の部分を「クラウン」、 ガードルより下の部分を「パヴィリオン」といいます。


「H&C」の場合はそうじゃない場合より、市場価格が当然高くなりますね。
「H&C」のジュエリーでは、ハートキュースコープという小さなスコープが付属で付いていたりするので、自分でスコープを眺めて楽しむことも出来たりします。



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宝石鑑定の話し そのA

宝石鑑定の話しA 

鑑別書

鑑別書は「鑑定書の話し その@」の冒頭で説明した通り、その他の宝石の鑑定及び、ダイヤの場合は、ルースではなく、ジュエリー製品として枠に納められたものの分析結果を表示したものです。

枠に収められた「セット石」の場合、その石が天然ならば、例えば「天然ダイヤモンド」などと記載され、
その重量は枠の地金にされた「刻印」の数値が記載されています。

また、例えば、コランダム系などの場合、「鉱物名:天然コランダム」、「宝石名:ブルーサファイア」などと記載され、「色の改善を目的とした加熱が行われています」などのコメントも表示されています。

鑑別書は、その石が、天然石なのか合成石なのか模造石なのか、天然ならば、人偽的な処理がされているのかを表示し、形状や重量、その他の科学的・物質的な分析を示したものです。

加熱処理がなされているかどうかは、高度な検査・分析が必要であり、その検査を必要とされる場合は、別途費用及び更なる検査日数がかかりますが、コランダム系のルビー・サファイアなどは通常は加熱処理がなされているものが殆んどで、そこまではしない場合が多いです。

例えば「非加熱のルビー」とう謳い文句で、その分析書なしの状態で購入した消費者の場合は、その真偽が知りたい場合が多いでしょうから、その意向のある人は、そのことに対する検査・分析を頼むことになります。


ソーティング

ソーティングあるいは、ソーティングメモと呼ばれ、いわゆる簡易鑑定書・簡易鑑別書の事です。
ビニールケースの中に入った、免許証サイズくらいの小さな簡易鑑定書です。

通常の鑑定書・鑑別書より記載された項目は少なくなりますが、商取引及び消費者への安心感を与えるために必要な分析結果は記載されており、内容が変わるわけではありませんし十分通用し、安価なことからも通常頻繁によく利用されされています。
内容の分析結果は間違いのないものですから。



鑑定検査機関

一般的に信頼の大きな機関の代表といわれるのが、
「中央宝石研究所」です。

この機関の鑑定書があれば、仮に売却する時も買取査定で高評価を受けるのではないでしょうか?
(分析結果の信憑性が高いという意味で、元々の石の質が悪ければ当然買い取り価格は高くはならないですし、同じ分析結果なら「中宝」のほうが信頼されるという意味です)

他の有名な検査機関は、「全国宝石学協会」「AGT(GIA JAPAN)」「真珠科学研究所」などで、俗に「A鑑」と呼ばれる機関で、この機関ならば、どの機関でも安心だと思います。

ちなみに私が鑑定を依頼する場合は、支店の場所も分かっていることと地理的な近さのこともあり、「中宝」に頼みに行きます。
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2010年04月22日

サファイア タイで問題となった加熱処理

ベリリウム拡散加熱処理

通常、市場に出回っている宝石、特にサファイアなどのコランダム系の多くは加熱処理が行われています。

天然を起源とする色の非加熱といわれるサファイアに比べ、市場価格を安くすることで、提供する側・消費者双方が納得する形でバランスを保ってきました。

このような処理を「エンハンスメント」と呼びますが、天然石が本来持っている性質を損なわない範囲で処理される場合と考えられており、それ以上の処理の場合は、「トリートメント」と言われる処理となります。

コランダムの「エンハンスメント」とエメラルドの「トリートメント」などの種類が違う宝石で、通常よく行われている処理と認識されている場合と違って、同じサファイア、同じ種類の宝石においてのその違いは大きいものと言えます。


2005年の末以降から、タイのマーケットで「ベリリウム拡散加熱処理」を施した「ブルーサファイア」の存在が認められ大きな問題となりました。

なぜこれが問題になったのかと言うと、その処理方法では本来の天然石の性質を損なう可能性があることと、新技法の加熱処理であることで、国際基準の問題となること。

また、タイ側が明確な情報開示を怠っていることなどから大変な問題だとされています。

サファイアはダイヤなどと共に宝石全体のマーケットにおいて、 「3大宝石」と呼ばれるほどの需要とマーケットを誇っており、当然国際的な問題となるわけで、AGL(宝石鑑別団体協議会)やJJA(日本ジュエリー協会)などがタイで会議を行いました。

タイの処理工場では、このような処理をしてもヒーテッドサファイアと呼ばず、ナチュラルサファイアと呼んでいたそうです。


中央宝石研究所によると、「Be(ベリリウム)拡散加熱処理」が行われたブルーサファイアを分析すると、くもの巣状のテクスチャーや点状の包有物が十字状に交差して並んでいるなどの「Be処理」特有のものが観察されたようです。

このような問題は、何よりも情報開示と高度な分析が必要であり、タイ側の今後の対応が注目されます。

また、当然市場にこのような処理石が、その正体を知られないまま出回ることになるわけであり、タイ側の信用とそのことによるブルーサファイアの市場の動向に多大な影響を及ぼすことになります。

国際基準はおいといても、完全で誠実な情報開示がなされるのであるならば、そのような処理石として市場価値が需要と供給のバランスにより自然と価値・価格が定められて行くものでしょう。

真摯なる情報の開示が求められます。
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2010年05月10日

宝石鑑定B 鑑別の方法

宝石鑑定の話し3

以前記述したように鑑定書と鑑別書なるものがあり、大雑把にいえば、「鑑定」はダイヤモンドに対してだけに行われているもので、ダイヤに「等級・位」をつけるものです。(グレーディング)

それに対して、「鑑別」は宝石を「識別・区別」するものと言えます。

まずは、その石がどのようなものに属するのか。
天然石か模造石・合成石なのか。そこで、その属性を調べるため鑑別することになります。


「屈折率」
鑑別の方法としては、まず「屈折率」があります。
宝石の中に光が入ると折れ曲がります。
それぞれ石により屈折率に違いがあり、この屈折率で大方の予測がついたりします。

合成石などにも似たような屈折率を示すものがあり、勿論これだけでは判断はできません。

ちなみに、ダイヤモンドの屈折率は、約2.42で、非常に高い屈折率を持ちます。

「偏光性」
一定方向のみに振動する光(偏光)を利用して、その石の種類により、宝石に光が入ったときに(斜めに)、それが1本のままで進むのか、2本に分かれるのかを調べます。

1本で進む傾向を「単屈折性」といい、分かれるのを「複屈折性」といいます。
(自然光は、あらゆる方向に振動しています)

「多色性」
複屈折性のある宝石の色を見たとき、方向によって色が異なる性質を持っているものがあります。

多色性の石は二色の異なる色を示し、宝石によるそのコントラストの違いを判断します。

「蛍光性」
宝石に長・短波の紫外線を照射して、その宝石特有の蛍光色の特徴を調べます。
宝石により青っぽい色や赤っぽい色が現れます。

「分光性」
その宝石特有のスペクトル(光の分散による配列された色帯)を検査して識別します。
同じような色に見えても、その成分によって吸収性に違いがあります。

大雑把に言えば、その宝石の着色原因となる特徴を調べるわけです。
スペクトルカラーのバンド(帯)にそれぞれの特徴が現れ、判断します。

「拡大検査」
その名の通り、顕微鏡で数十倍に拡大して内部の検査を行うものです。
宝石内部の「インクルージョン(内包物)」を観察します。合成のものもこの検査で合成特有の状態・現象が現れ識別できます。


このような検査の検査結果が「鑑別書」に記載されていると思います。
これに、「鉱物名」や「宝石名」、「開示コメント」、「カット・形状」、「重量(カラット)」(セット石の場合は刻印の数値)、寸法等が記載され、「鑑別書」として発行されます。

ダイヤの場合は(ルースの場合です)、これも前述しているように、「4C」の等級が示されていて、図で示されたプロポーションやガードルの厚さ、キューレットサイズ、仕上げ状態及び、蛍光性などが記載され、鑑別書共々「写真」が添付されて、「鑑定書(グレーディングレポート)」が発行されます。


ちなみにカラーグレードは、基準となる「マスターストーン」を用い識別します。
「E−F」「F−G」「G−H」「H−I」「I−J」「J−K」の各色の中間の色を持つグレードになっています。

カラーグレードもそうですが、「クラリティー(透明度)」も非常に判断が難しいものです。
VVSよりのVS−1もあるでしょうし、VSよりのVVS−2もあるでしょう。

もちろん、まず区別がつかないくらいの差ですけどね。SIクラスはやや幅があると思います。
posted by マーキス at 12:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 宝石の鑑定 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月26日

ダイヤの鑑定 揺れる業界、失った信頼

「全宝協」の鑑定かさ上げ問題

「全国宝石学協会」が、ダイヤの「カラー」を甘く鑑定し、評価をかさ上げしたという衝撃的な問題が起きました。

宝石鑑定においての大手であり、俗に「A鑑」と呼ばれ、消費者・業界共々多くの人々に信頼されてきた機関です。
宝石・ダイヤモンドの鑑定に関しての信頼性が著しく侵される由々しき行為であり、大変な問題です。

この背景には、輸入・卸業者、小売業者との癒着があったのは明らかでしょう。
どちらも、鑑定で高く評価されればその分高く売れるわけであり、利益が上がるのは当然です。

いっぽう、鑑定機関には信頼を損なうデメリットはあれど、メリットはありません。
その危険を冒してまでそのような暴挙に出たのは、報道でも述べられているように癒着、あるいは圧力が掛かったのでしょう。

他の業者に思惑があることは置いといて、鑑定機関は確固たる信念と誇りを失ってはいけない業界です。

ただ、昨今の不況から鑑定機関も過当競争に晒されているのは間違いありません。
役所等の公的機関の確認作業(これとていい加減な部分が多々あります)とは違い、民間の機関ですから確かに経営的に厳しい部分があるのは否めないのでしょうが、あってはならない事です。

「全宝協」側は「他社や基準石と比べて、自社評価が厳しすぎる傾向があり、許容範囲の修正を07年2月に決め、全社に指示を出した」と説明。
しかし、「全宝協」の評価に対して厳しすぎるとう意見は聞かない。

「他社とのずれを許容範囲内で微調整するため」などと説明しているが、マスターストーンに基づく基準と判断に自ら勝手に修正していたという事です。
判断基準に問題があるのならば、業界を束ねる協議会に意見・調整を求めるべきであり、独自の判断で暴走すべきではない。


平成19年2月から20年10月までの間に鑑定したダイヤの再鑑定を実施するとのことですが、カラーストーンに関して世界屈指の実力を持ち、パパラチアサファイアの鑑定での第一人者ともいわれる「全宝協」に対するこの問題の対処が遅すぎたのは否めません。

約3年越しの遅すぎた協議会の判断と対処。再鑑定の対象となるダイヤを協議会が探し出すのは容易なことではないでしょう。

「A鑑」以外の鑑定機関の鑑定はもっと酷いところは沢山あるのでしょうが、「中央宝石研究所」と並んで皆の絶大な信用と信頼を得てきた「全国宝石学協会」のこの問題は大変大きなものです。

「宝石鑑別団体協議会」の土居会長が記者会見後、「夢であって欲しい。悪夢です」と言って会場を後にしたらしいですが、業界にとってこの激震は、まさに青天の霹靂だったのでしょう。
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ダイヤの鑑定 望まれる信頼の回復

先の記事投稿で題材にした「全国宝石学協会」のダイヤのカラーの鑑定かさ上げについて。


「ダイヤのカラーグレーディング」
ダイヤのカラーグレーディングは、マスターストーンを基準としながらグレーディングに適した光源を放つライトを適切な明るさ(lx)で使用して識別します。
(自然光では、北からの彩光(光源)がよいと云われています。現在はディライトを使用した機械光です。)

マスターストーンは「パヴィリオン側」を上向きにセットされています。
「クラウン側(テーブル側)」を上にすると輝きと反射が強く、正確な判断が難しくなるからです。

また、測色する部分の面積により、大きい面積の場合は小さい面積に比べ、明度・彩度ともに高く感じる「面積効果」と呼ばれる色の見え方が生じるので、大きさと観察距離に注意しなければなりません。
(大方の決められた測定距離がありますが、測定者により独自に微妙な違いがあると思います。)

識別の際の背景色も非常に重要なので、とうぜん統一された背景色の中で識別されます。(白いソーティングパッド)

熟練の能力と技術が必要な鑑定であり、測定器などで機械的かつ正確な判断が簡単に出来るようなものではありません。

「全国宝石学協会」が行ったカラーグレードのかさ上げも、我々から見たらホンの僅かなものなのでしょう。
(もちろん、それこそが重要なことなので問題になっているのですが)

たぶん今後は光学機器などにより、熟練度やその時々の調子等のバラツキをなくすことが出来るよう、高度な測定機器が開発・使用されるようになって行くと思います。


ちなみに「色の色彩」には、「色相(ヒュー)」「明度(バリュー)」「彩度(クロマ)」「三属性」があり、赤・緑・青の色を混ぜると白くなる「加法混色の三原色」とシアン・マゼンタ・イエローを混ぜると明るさが減って黒くなる「減法混色の三原色」があります。

科学的なことは分かりませんが、上記の色彩に関する波長(色相に関係)や反射率(明度に関係)等、およびその他の様々な数値的データのによる客観的な判別など、宝石の測定に適した様々な光学機器が今後も開発され、使用されるのだろうと予測します。


さて、「全国宝石学協会」の大きなこの問題は、業界ではどのように見ているのでしょう。

私個人的な感覚としては、今でも「全宝協」にはある種の信頼を持っていてそれは変わりません。

鑑定機関は色々ありますが、自分なら今どこの鑑定機関に鑑定を依頼するかというと、やはりどことも知れない機関より「A鑑」の「全宝協」の方を信頼するだろうというのが正直な感覚・気持ちです。

個人的には、何かの宝石に鑑定・鑑別書等がなく新たに依頼する場合、厚い信頼を寄せていることと地理的な近さ等の理由により、私の場合は「中央宝石研究所」に依頼することがほとんどですが、近くにあれば「全国宝石学協会」にも今でも依頼すると思います。

名の通っていない機関では、新たに鑑定依頼する気にはなれないのが正直な気持ちです。

そのような中にもよい機関もあると信じたいのですが、その機関を評価するだけの「資料・知識、あるいは評判」など、その機関自体の評価資料があまりに乏しく評価のしようがないのです。

また、業界全体の信頼がやはり「A鑑」に集中しており、例えばどこかの業者にその宝石と鑑定書等を見せた場合、名の通っていない検査機関の鑑定書では評価が明らかに下がるだろうからです。

決して他の機関を悪く思っているわけではありません。
ただ、甘い鑑定をする機関が多いという噂も聞きますし、評価資料の有無と業界全体の意向等により仕方がない部分があるのです。


「全国宝石学協会」が素晴らしい鑑定技術を持っているのは間違いありません。
「全国宝石学協会」はこれから信頼回復のため全力を挙げることでしょうし、そうなってもらいたいものです。

この鑑定機関が信頼回復してくれることが、宝石業界のためになると思いますし、業界全体皆がそれを望んでいるのではないでしょうか。

posted by マーキス at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 宝石の鑑定 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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